今流行りのエンディングノートと生前整理を考える

今流行りのエンディングノートと生前整理を考える

「終活」という言葉を耳にすることがあると思います。
就職活動を「就活」、結婚のための活動を「婚活」と略しているに対し、ここ数年、生前に葬儀の準備などを行っておくことを「終活」と呼んでいます。
これは1999年に週刊朝日が作った言葉で、今は生前の準備のみならず、人生のエンディングまでの時間をどう過ごすかといった内容も「終活」と呼んでいます。

終活のなかで最も知られているのは、墓地や墓石の準備でしょう。
自分が亡くなったあとに遺族、特に遺した子どもたちに墓地や墓石に関する費用を負担させるのは忍びない、そう考える高齢者の方が増えています。
自分自身で墓地を探し、貯蓄しているお金で墓地・墓石を購入する。葬儀の手配も生前に行っておく方もいます。

遺産などが残っていれば、もちろん相続に関する遺書(遺言書)も必要となります。
亡くなったあとに家族がトラブルに巻き込まれないようにするための配慮もまた終活なのです。

生前の遺影撮影が増えている理由

他の終活も、多くのメディアで取り上げられています。
特にブームともいえる現象を巻き起こしているのは、生前の遺影撮影ではないでしょうか。
近年、遺影撮影を専門にするカメラマンや業者が急増し、昔からある町の写真屋さんでも生前の遺影撮影を行うところが多くなりました。

生前の遺影撮影が増加したのは、以下の要因が挙げられます。
まず葬儀を行う際に遺族と業者にとって最も困るものが、遺影探しだというのです。
このブログを読んでくださっている方もほとんどそうだと思いますが、日常生活で自分のプロフィール写真を撮影することは、まずありません。
あったとしても会社や仕事用のもので、しかも一度撮影すると、新たにプロフィール写真を取り直すことも少ないでしょう。
テレビを見ていて、番組で使われるタレントさんの写真に対して「これはいつ撮ったものだろう?」と思ったことはないでしょうか。
営業のために「宣材写真」を多用する芸能界でも、仕事の忙しさも相まってプロフィール用の写真を撮り直すことは難しくなってしまうのです。

一般家庭でも同じです。ご家族が突然亡くなった場合、急きょ遺影写真を探さなければいけません。
しかし前述のとおり、普段からプロフィール写真を撮影している方は少ないですし、あっても昔のものか、スナップ写真程度のものであることがほとんどでしょう。
遺族や業者も故人にとってベストな写真を探します。とはいえ完璧なものを用意することは難しい。
同時に、多くの人の視線が集中する遺影には、誰もがしっかり撮った写真を使ってほしいと思うのも当然のこと。
そこで生前に、プロのカメラマンに遺影用の写真撮影を依頼する高齢者の方が増えているのです。

これは遺品整理にも同じことが言えます。
孤独死、突然死が増加している現代にあって、特に準備もなく遺品整理の時を迎えた遺族にとっては大変な作業となります。
遺した家族にそれほど大変な作業を課してしまうことは、故人も望むところではないでしょう。
そんななかで今、遺品整理業者への相談で増えているのが「生前整理」です。
自分が生きている間に、家や部屋を整理し、何がどこにあるかを家族に伝えておくという、ひとつの終活への関心が高まっています。

では「生前整理」に関するポイントをご紹介しましょう。

生前整理は「促す」ことから始めよう

前述のとおり、自ら終活を行うケースは増えています。
とはいえ「亡くなった時のことを考えるのは縁起が悪い」と、生前整理に対してネガティブな意識を持つ高齢者の方もいて当然です。
そこで家族が高齢者の方に生前整理を始めてもらえる促すことから始まります。

生前整理だと思わせない

そもそも「亡くなった時のことを考えるのは縁起が悪い」と思う方が多いのであれば、生前整理を生前整理だと思わせないことも、ひとつのポイント。
たとえば、日常的な掃除・片付けのなかに生前整理を盛り込んでみましょう。
年末年始には、どの家庭でも大掃除が行われることが多いと思います。
家族が離れて住んでいる場合でも、実家に親戚一同が揃い、親御さんと一緒に大掃除を行うこともあります。
その時がチャンスです。大掃除の一環として生前整理を促してみましょう。

通常のごみの処分はもちろん、親御さんが「取っておこう」と思っているものでも、大掃除のなかで思い切って捨てることもあります。
また、預金通帳や土地の権利書など遺品整理にまつわるものを、大掃除のなかで親御さんに確認してメモしておけば、後の遺品整理の際に役立ちます。

ここで注意しておきたいのは、あくまで生前整理は親御さんの意向に沿った形で進めなくてはいけないという点です。
親御さんに「捨てない」と拒否されてしまっては、整理が進みません。家族にとっては不用だと思われる物でも、本人にしてみれば、思い出が詰まった大切な物であるからです。
家族が親御さんに対し片付けを頭ごなしに押し付けることは厳禁。特に「捨てる」という言葉に拒否反応を示す方は多いので注意しましょう。

そこで、親御さんに「物を捨てる」のではなく「生活しやすい家にしよう」と提案してみてはどうでしょうか。
「物を捨てる」というネガティブな思考ではなく、「何を残すか」とポジティブに考える姿勢で、親御さんと話し合うことも重要です。

いつ生前整理を考えるか

年末年始の大掃除時期のほかにも、生前整理を考えたり、相談するきっかけとなる出来事は何でしょうか。
親御さんが倒れ、入院した時。高齢となった親御さんが介護施設に入る時。子ども夫婦と同居する時、など家族内で今後のことを話すべき機会はあります。
あるいはお盆や他の親戚の法事などきっかけに、故人を偲ぶとともに、家族全員が今後のことを意識しやすくなることもあります。
できるだけ生前に、親御さんの意向をしっかりと聞き、計画を立てて生前整理を行っていきたいものです。
遺品整理業者では、こうした生前整理に関するご相談も随時受け付けています。

エンディングノートを作ろう!

生前整理とエンディングノート

「終活」ブームとともに知られるようになった物のひとつが、エンディングノートです。
生前整理において最も重要な役割を果たすツールと言えるでしょう。
葬儀やお墓、資産の相続や形見分け、介護・終末医療の希望などを記しておくことで、死後に遺族が遺品整理を行いやすくしてくれるものです。

最近は書店でエンディングノートが売られていたり、遺品整理や葬儀業者のホームページでダウンロードすることもできます。
ただ、それだけ身近な存在になりつつあるエンディングノートですが、遺言書と何が違うのか、といった疑問を持つ方も多いかと思います。
ここでエンディングノートと遺言書の違いも含め、その代表的な内容をご紹介します。

エンディングノートに法的効力はない

遺言書とは、資産相続などについて死後、遺族に自分の希望を伝えるための物です。
特に法廷相続と異なる形で財産を分けたい場合は遺言書が必要となり、かつその内容が最優先されるという、法的効力を持ちます。
書き方にも法的な規定があり、作成して死後に弁護士の手による公開を依頼するために、数十万円から数百万円の費用がかかる場合もあります。

対してエンディングノートに法的効力はありません。
ノートに書かれていることはあくまで希望であり、遺言書があれば相続などは法的に遺言書の内容が優先されます。
相続問題が発生しそうな資産を遺す場合は、遺言書を作成しておいたほうが良いでしょう。
一方エンディングノートでは、遺言書に記されている内容が、どうしてそうなったかを説明しておきます。故人の気持ちを生前にまとめ、自らが話し合いに参加できない場に自分の思いを伝えるものでもあるのです。

エンディングノートにはどんなことを書くのか

エンディングノートに決まった書き方はありません。
市販の物であれば、一般的に残しておくべき自身の情報をまとめられるような作りになっています。例としては

・履歴書、自分史、家系図など家族の情報、友人関係
・自分の健康状態、服用している薬、かかりつけの病院、医師などの情報
・預貯金の金額、金融機関の情報(口座番号など)
・株式など金融資産、貴金属や美術品などの財産、不動産の情報
・生命保険、損害保険、年金、ローン、クレジットカードの情報
・葬儀、お墓、介護、終末治療に関する希望

といった内容が挙げられます。他にも気になることがあれば、どんどん書き足していっても構いません。
このノートがあることで、何がどこにあるかわからない状態で遺品整理を行うよりも、遺族にとっては時間的・費用的な負担は軽減されるはずです。

資産や預貯金の額や名義といった情報は、正確に記しておきます。
相続にあたっては全ての遺産を調べることになるので、その膨大な作業量を減らすための手助けとなるからです。
反対に、エンディングノートに「記しておかないほうが良い」と思われる物もあります。
それは印鑑や重要書類が置かれている場所です。
預貯金の通帳や資産は、それに関わる印鑑や証書が無ければ利用することができません。
遺族に残したい物を悪用されることを防ぐため、印鑑や重要書類がどこに置かれているかは、最も身近な家族や信頼できる人間にのみ伝えておくようにしましょう。

エンディングノートはいつ、誰が作るのか

エンディングノートを作成するために、もうひとつ重要となるのは「いつ、誰が作るのか」ということです。
生前にご自身が書くのはもちろん、家族が親御さんに必要な情報をヒアリングしながら、エンディングノートを作成していくのも良いでしょう。
冒頭にも書いたとおり、「亡くなった時のことを考えるのは縁起が悪い」と考える高齢者の方は少なくありません。
あるいは「家族から、もうすぐ死ぬと思われているのか」とショックを受けてしまうこともあります。
相手の気持ちを傷つけることなく、エンディングノートの作成を促すには、どうすれば良いのでしょうか。

片付けの時と同様に、エンディングノートであることを伝えず、資産などの情報を管理するためのものだと説明してみても良いでしょう。
隠すことなく真正面からエンディングノートであることを説明するために、まずは家族が自身のエンディングノートを作り、「これを作れば便利だ」ということを示すのも、ひとつの方法です。
テレビ番組の特集や雑誌の記事を見せ、「今こんなに便利なものがある」と、エンディングノートが一般的な存在であることを伝えた、という実例もあります。

遠く離れた場所に住んでいる家族や親類と情報を共有しておくツールとしても、エンディングノートはとても役立つ物です。
遺品整理をプロの業者に依頼することになっても、エンディングノートがあれば、様々な労力と費用を省くこともできます。
湖人の気持ちを尊重し、トラブルを避けるための生前整理と、エンディングノートの作成に、ぜひ取り組んでみてください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。