遺品整理のために準備するもの

遺品整理のために準備するもの

「遺品整理」という言葉を聞いて、最初に思い浮かべるイメージは「片付け」ではないでしょうか。
ただし遺品整理における「片付け」や整理術とは異なります。
書店などでも遺品整理に関する本が、いわゆる片付け術の書籍とともに並べられているケースがあり、混同されることもあるかもしれません。
もちろん片付け術が遺品整理に生かせる部分は多いですが、最終的な目的が異なればそれは「似て非なるもの」という認識を持つことが大切です。

遺品整理の準備

「片付け」と「遺品整理」を比べて、何が似ていて何が異なるかは、その目的やゴールの違いによります。
「片付け」の多くは、今後も続く生活のことを考える。たとえば自宅を片付けるのであれば、今後の生活にとって便利な置き場所を考えたり、不必要なものをごみとして処理することになります。
対して「遺品整理」は、故人の生活していた場所や使っていた品々を整理するうえで、遺品の買取りやリサイクル、相続のことも考えながら行わなければなりません。
その目的のなかで片付けや自身の「今後の生活」を考えることは、ひとつの要素ではありますが、それが全てではないのです。

そこで今回は、遺品整理のために、まず事前に準備・確認しておいたほうがよいことをご紹介しましょう。

遺品整理は事前の計画をしっかりと!

期間

遺品整理で故人の自宅や部屋を片付けるうえで、まず大切なのは片付けにどれだけの日程・時間をかけることができるかという点です。
遺族のお気持ちを考えれば、もちろんじっくり、ゆっくりと時間をかけて整理していくほうが望ましいでしょう。
しかしここが遺品整理のひとつのポイントでもあります。
たとえば同居している方が亡くなった場合、生前から故人の暮らしを把握しており、何がどこにあり、かつ何をどう整理すべきかも理解しているかもしれません。
一方で、遺品整理業者に来る依頼の多くは、遠く離れた場所(地方の実家など)にお住まいの親御さんが亡くなった時、その故人の家の片付けなのです。
となれば、遠くに住んでいる故人のご家族や親戚が一同に介する期間や日程は限られてきます。
会社にお勤めだと、「忌引き休暇」を利用することはできるかどうかは、それが福利厚生の一部なので各社の就業規則によって異なります。

忌引き休暇の例としては、一般的なものでいうと以下のとおり。左が故人の血縁関係、右が休暇を取ることができる最大日数です。

配偶者:10日間
父母:7日間
子:5日間
兄弟姉妹、祖父母:3日間
叔父・叔母:1日間

どれだけの日数を忌引き休暇として取得できるかどうかは、故人との血縁関係によるものでもあるので、事前にお勤めの会社の就業規則を確認しておくことをお勧めします。
いずれにせよこの日数でお通夜、お葬式に加えて遺品整理まで行うとなれば、効率的に時間を使わなければ難しいでしょう。
特に遺品の中でも、早めに対応しなければ法律に抵触するものもあるので、ご注意ください。

この忌引き休暇を下見に利用するというのも、ひとつの方法です。
じっくりと故人の家や部屋を下調べし、何を残し何を捨てるべきか、どの作業を優先すべきかという計画を練ることも重要です。

前述の法律に抵触する部分のみ先に対応し、それ以外は後日また数日の休暇を取り整理するほうが効率的かもしれません。
逆に、いつからいつまでの間に整理を終えるという目標を立てなければ、終わりの見えない作業になってしまう可能性もあります。

目の前にあるのは、大切な人が残した品々です。一つひとつに思い出が詰まっていることでしょう。故人を偲び、思い出話が深まることもあります。
また、ご自身の気持ちの整理がついておらず、作業が滞ってしまうこともあります。それも遺品整理においては仕方のないことです。
それでも故人の思い出は消えることがありません。思い出話に花を咲かせる機会はまたいつか訪れます。
対してここまで述べたように、遺品整理の機会は、それほど多くはありません。さらに言えば、故人の遺品を供養するためにも遺品整理が必要なのです。
だからこそ事前にしっかりと計画を立て、目標に向かって作業を行っていくことこそ、遺族にとって重要な使命だと言えるのではないでしょうか。

費用

遺品整理には当然、費用がかかります。
金額は内容・作業量によっても様々ですが、作業に必要な道具を揃えなければいけませんし、ごみが大量に出ればごみ処理業者に廃棄を依頼することになります。
家具などをリサイクルに回す場合は、リサイクルショップや不用品引き取り業者にお願いする場合も費用がかかります。
合計で数十万円かかることもあれば、百万円を超えるケースもありますし、まずは下調べをして予算を考えておくこと。
そうすれば、不測の事態が発生しても、予算と照らし合わせながら対応することができます。

計画

これは期間や費用も関わってくることになりますが、遺品整理のために何を行わなければならないかという計画を、ノートなどに書き出しておくと作業もスムーズに進むはずです。
何日までに、何を片付け、貴重品など何を探し出し、家族・親戚と何を話し合い、それにどれだけの費用がかかるのか。
清掃業者に依頼するか、家具や家電のリサイクル・買い取り業者の手配は終わっているか、などToDo(やること)リストを作成することから始めたほうが良いでしょう。

作業当日、自分以外の故人の家族・親戚がどれだけ集まることができるかどうかも、重要なポイントです。
作業人員という観点はもちろん、遺品の相続などは親族全員に関わる問題になってきますので、どんな遺品があって誰が引き継ぐのかなど、確認し合う必要があります。
もし作業当日に他の家族・親族が来られなければ、その場合の対応も考えておかなければなりません。
遺品の相続、引き取りは最もトラブルが発生しやすい部分でもありますし、委任状を書いてもらうこともトラブルを回避するための手段のひとつ。
前述のとおり多くの親族が一堂に介するタイミングは限られているので、しっかりと事前に把握しておきたいところです。

ここまで遺品整理における主な事前準備をご紹介しました。
繰り返しになりますが、ご遺族にとって気持ちも落ち着いていない状態で、すぐに遺品整理を始めることは難しいものです。
そこでお葬式や四十九日法要など親戚一同が集まった時に遺品整理に関して相談し、できるだけ多くの関係者が参加できるように調整していきましょう。

片付け・分別・清掃に必要な5アイテム

下記は片付け・分別・清掃のために用意したほうが良い物の一例です。

■ 軍手、ほこり避け用マスク

掃除の必需品です。
最近はハウスダストによる気管支への影響も懸念されているので、状況によってはマスクだけでなく目を覆うゴーグルなども用意しておいたほうが良いかもしれません。

■ 各自治体指定のごみ袋

ごみの捨て方は、自治体によって異なります。
お住まいの地域とは別のエリアでの遺品整理は、ごみ袋だけでなく、可燃物・不燃物などの区別や、ごみ出しの日なども確認しておく必要があります。

■ 段ボール、ガムテープ、荷ひも

これは引っ越しをイメージすると良いでしょう。
一般的な「片付け」と違うのは、この部分といっても過言ではありません。
故人の自宅や部屋を丸ごとひとつ整理するのですから、一度片付けたあと何がどこにあるかわかりやすいように細かく整理することが重要ですし、そのために段ボールは多めに用意しておきます。
本、雑誌などをまとめる荷ひもも必要です。

■ カメラ(スマートフォンでも可)

これは後々のトラブル回避のためにも用意しておきたいものです。
東日本大震災や熊本の震災でもニュース等で報じられましたが、被災・災害の認定を受けようとしても、受けられなかった方がいます。
それは「震災による被害」を証明できなかったためです。
何かといえば、これらの震災では発生直後からボランティアの人たちが、崩れた家や倒れた物で溢れかえった部屋の片付けを行ってくれました。
しかしながら片付けが終わったあと、役所で被災の申請をしようとしても、片付いた部屋を見たところでどれだけの被害だったのかがわからない、というのです。
現在の法令では、被害の程度が認定の可否を決めることになっているからです。

これは被災認定だけの話ではありません。
貴重な美術品を運搬する業者も、必ず運搬の前に品物の写真を撮っておきます。
運搬した品物に何か傷がついていたとしても、それが運搬中についた傷かどうか検証するためです。
最初からあった傷を依頼主が気づいていないことも少なくないので、無用なトラブルを避けるために写真を残しておくのです。

遺品整理も家族・親戚をはじめ多くの人が関わることです。
何がどこにあったか、あるいは最初から存在していないものか。
などなど、相続問題などでも大切な証拠となりますので、整理・片付けを行う前に細かく写真を撮っておきましょう。

■ 筆記用具

これも引っ越しの時と同じく、段ボールに何が入っているか書き記しておいたほうが後々便利です。
さらにペンだけでなくノートも用意し、部屋のどこに何があったかなと、写真だけでなく文字としても残しておいたほうが良いでしょう。
何日間もの作業になる場合は、作業の経過を逐一記しておけば、何が終わってまだ何をやらなければいけないかが一目で整理できます。
上記の計画ノートと合わせて作っておけば、作業の効率化が図れます。

意外と知られていない法的な優先事項

最後に、遺品整理作業のなかで優先的に対応したほうが良いものを、事前に見ておきましょう。これらは法律に大きく関わってくる部分であり、かつ意外とそれが知られていないところでもあります。

年金手帳

故人が国民年金や厚生年金を受給していた場合、亡くなってから14日以内に役所や社会保険事務所へ、年金証書とともに死亡届を提出しなければなりません。
これを怠り、死亡後もしばらく故人もしくは遺族に年金が支払われていると、不正受給として刑罰に問われる可能性もあります。

公共料金領収証

電気、ガス、水道といった公共料金が銀行口座からの引き落としになっているか、直接支払う形になっているかなどを把握しましょう。
携帯電話やインターネットを利用している場合も同様です。
すぐに解約の手続きを行います。自動引き落としの場合、解約までの間に引き落としがかからないようにチェックしておくことです。

相続に関わるもの

故人の遺品をどう引き取るか、あるいは相続を放棄するか。どちらにしても、相続については3カ月以内に判断しなければならないと法律で定められています。
そのためにも、まずは遺品の内容を把握し、完全な整理の前に相続のことを決めておきます。

空き家問題

近年、テレビで「空き家問題」を取り上げる番組が増えてきました。
持ち主を失った多くの家屋が放置されているのです。
故人の家が遠方にあり、遺族が住む予定もない場合、取り壊すにも高額の費用がかかってしまうため、そのまま放置されることが少なくないのです。
問題は、放置された空き家が火事になったり、損壊などで周辺の住宅・住民に事故が発生した場合、損害賠償を請求されることもあります。
かといって空き家を相続するとなれば相続税や固定資産税もかかってくるので、判断は難しいところかもしれません。


遺品整理は多くの人が関わることです。決して一人でできるものではありません。
家族・親戚はもちろん、各分野の専門家に相談しなければならないことも多い。
片付けにもかなりの日数を要します。
そこで困った時は全国にいる遺品整理士に相談してみても良いでしょう。
各々の状況に合わせたアドバイスをくれますし、プロの手に任せれば作業日程が大幅に短縮します。
自分が亡くなったことで遺族が困るような状況を、故人が望んでいるはずはありません。
まずは作業前にしっかり計画を立て、準備しておくこと。
それがスムーズな遺品整理のための重要なポイントなのです。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。