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遺言書が無効になる9つのケースとは

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人が亡くなると、その人の遺した財産を引き継ぐ「相続」が発生します。
相続は、故人とどのような関係にある人が、財産のうちどのくらい受け取れるか法律で決められています。
ですが、もし、故人が法律とは違う割合で財産を分けたいときや、法律上は財産を受け取れる人(法定相続人)でない人に渡したい場合、また指定した相続人に財産を渡さないといったこともできます。
遺言書にその旨を書き残しておけば、その希望を叶えることができます
しかし、遺言書の書き方を誤ってしまうと無効になるので注意が必要です。
遺言書の書式には厳格な決まりがあり、そこから逸脱していると遺言書が無効となり、内容が実行されません。
今回は、遺言書が無効になってしまうのはどのような場合なのか、見ていきましょう。

無効になった遺言書

遺言書とは?

まずは、遺言書について簡単におさらいしておきましょう。

遺言書は遺産分割協議より優先される

人の死後、相続が発生したら、まず最初に相続人が確認しなくてはならないのが、故人が遺言書を残しているかどうかです。
遺言書は、故人が自分の財産を、誰に、どのように引き継がせたいのかという意思表示です。
そのため、法定相続人よりも遺言の内容が優先されます。
つまり、もし遺言書があった場合、遺産分割協議をせず、他の相続人に同意を求めることなく、相続手続きを進めることができます。

3つの形式

遺言書の形式

遺言書には3種類があります。

自筆証書遺言

遺言者(遺言を残す本人)が、遺言の全文・日付・氏名を自分で手書きし、印鑑を押した遺言書です。
最低限の紙、ペン、印鑑があれば、誰でも気軽に作成でき、費用もかかりません。
ただし、ルールに則って書かれていない場合や、遺言内容が曖昧な場合、法的に無効になってしまうことがあるので、注意が必要です。

また、以前は、すべて遺言者の自筆でなければなりませんでしたが、2019年1月13日以降に作成した場合、財産目録はパソコンなどで作成したものや預金通帳の写しなどを添付することが可能になりました。
ただし、自書によらない部分があるすべてのページに遺言者の署名・捺印が必要です。

公正証書遺言

公証役場で公正証書として作成した遺言書です。
公証役場に出向き、公証人が法律の規定通りに書類を作成します。
この遺言書に、遺言者、公証人、2人以上の証人が、内容を承認の上署名・捺印します。
確実に有効な遺言書を残したいときや、相続財産の金額が大きい時によく利用されます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言を作成

公正証書遺言と同じく公証役場で作成手続きをします。
遺言者が、遺言書に署名・捺印の上封印し、封紙に公証人、2人以上の証人が署名・捺印などをします。
公正証書遺言と違い、公証人に遺言書の内容を知られずに作成できるので、亡くなるまで絶対に誰にも内容を知られたくない、という場合に利用されます。
こちらはパソコンやワープロで作成しても構いません。

もし遺言書が出てきたら・・・

実際に遺言書が出てきても、すぐに開封せず、まずその遺言書がどの遺言書にあたるかを確認します。
もし、遺言書が公正役場で作ったもので作成したものであれば、開封しても構いません。
ただし、自筆証書遺言であった場合は、絶対に開封してはいけません。
公正証書遺言以外の遺言書は、家庭裁判所で検認手続きをしなければ、法的に有効な遺言書とはならないからです。
自筆証書遺言が出てきたら、未開封の状態で家庭裁判所の検認を受けましょう。
そうしないと、各種相続手続きを進めることができないばかりか、遺言の内容を実行できません。

遺言書が無効になってしまう場合とは?

では、遺言書が無効になってしまう原因にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。
今回は、代表的な原因9つを見ていきます。

日付がない

繰り返しになりますが、自筆証書遺言は、すべてを自分で作成します。
その中で非常に多いのが、日付の入れ忘れです。
遺言書には作成した日付を入れなくてはなりません。
しかし、書き終わって気が緩んでしまうのか、この日付を入れ忘れてしまい、遺言書が無効になってしまうケースが多いようです。

署名・押印がない

こちらも、日付忘れと同じく多いケースです。
遺言書を全文自筆で書き終えると達成感があるせいか、ついつい署名押印を忘れて保管してしまう方が多いようです。
せっかく内容がきちんと書かれていても、署名押印がないと無効になってしまうので、注意が必要です。

訂正の方法が間違っている

遺言書を書き間違えた場合、加除訂正の方法は法律で厳格に定められています。
この方法が間違っていると、全文が無効になってしまいます。

パソコンなどで作成した部分の署名・押印がない

自筆証書遺言は、基本的に全文を自分で書かなくてはなりません。
しかし、全部や一部をパソコンなどで作成し、無効になってしまうケースが多く発生しています。
繰り返しになりますが、2019年1月13日以降に作成した場合、財産目録はパソコンなどで作成したものや預金通帳の写しなどを添付することが可能になりました。
ただし、財産目録をパソコンで作成したり、資料を添付したりする場合には、遺言者の署名押印が必要です。
忘れず行いましょう。

遺言能力なき遺言書

遺言能力なき遺言書

公正証書遺言は、公証人のほか証人が2名も立ち会って作成するため、隙のない完璧な遺言書のような感じがします。
でも、実はここにも弱点があるのです。
公正証書遺言の作成は、遺言者が口頭で遺言書に記載したい内容を公証人に伝え、それを聞きながら公証人が遺言書を作成する「口授」で行うものと法律で決まっています。
しかし実際は、作成の流れをスムーズにするため、事前に公証人と遺言書の内容について打ち合わせをし、そこでほとんどの内容を固めてしまいます。
そのため、作成日当日には、ほぼ遺言書の素案ができ上がっており、その内容を公証人が遺言者に読み上げて確認し、これで問題ないかどうか訪ねる程度なのです。
そのため、遺言者が「はい」と言える能力さえあれば、公正証書遺言は作成できてしまうことになります。
つまり、事前の打ち合わせの際に、遺言者自身が認知症などで内容をしっかり把握できない状態であっても、作成当日に返事さえできればOKということなのです。
このようなケースでは、一部の相続人予定者が、遺言者を巧みに操り、公正証書遺言を作成させているような場合があります。
遺言書がいくら適切なものであっても、作成当時に遺言能力がなかったことが証明されれば、その公正遺言書は無効となってしまいます。
そのため、遺言書は、認知症になる前のしっかりした状態で作成しておくのがおすすめです。
被相続人の遺言能力をめぐって相続人間で争いが起こると、これを証明することは容易ではなく、長期戦になってしまう可能性もあります。
このような事態に備え、最近、一部の法律事務所では、遺言書を作成する様子の一部始終を動画で録画し、証拠として保管するという方法をとっています。
これにより、遺言書の作成時、本人に遺言能力があったことを客観的に証明できる重要な証拠が残ることになります。

不適格な証人

公正証書遺言を作成する際には、必ず2名の証人を自分自身で手配しなければなりません。
証人に特別な資格は必要ありませんが、次に該当する人は証人になれないので注意しましょう。

  • 未成年者
  • 推定相続人、受遺者、その配偶者、直系血族
  • 遺言を作成する公証人の配偶者、四親等内の親族、公証役場の職員

もしも、これらの人を証人として立ち合わせてしまうと、その時はバレなくても、実際に遺言書を執行する際、他の相続人から指摘されて無効となってしまうことがあります。
そのため、自分で証人を手配する際には、これらに該当しない人にお願いしましょう。
弁護士に作成を依頼すると、弁護士が証人を手配してくれることもあります。

不明確な内容

遺言書は、その内容をもって相続財産の名義変更手続を行います。
そのため、分割内容は、どの財産のことなのか、誰が見ても明らかに分かるように書かなくてはなりません。
特に不動産は、事前に登記情報を確認し、登記簿に記録されている所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積などを正確に記載する必要があります。
特に、登記簿の地番と実際の住所表記は異なるため、通常の住所表記で遺言を書くと、どの土地や建物か特定できず無効になってしまうケースがあります。
遺言書の記載は、曖昧で不明確な内容がないよう注意が必要です。

共同で書いた遺言書

2名以上の人が共同で作成した遺言書は無効となります。
2名以上の人が同一の証書に遺言を残すことを「共同遺言」といい、これは民法で禁止されています。

遺言者が15歳未満

 

子どもが書いた遺言状

 

遺言を残すことができるのは、法律で15歳以上と定められています。
そのため、15歳未満の人が遺言書を作成しても、無効となります。
遺言書は代理で作成することができません。
そのため、たとえ親権者である親であっても代理作成は認められません。

まとめ

もし、見つかった遺言が無効であることが明らかだった場合、相続人全員に異論がなければ、遺言の内容に縛られることなく遺産分割協議を行うことができます。
しかし、もし一部の相続人が有効だと主張する場合は、当事者だけでは解決できません。
調停や訴訟という法的手段によって解決を図ることになります。
のちに争いを残さないためにも、また、不当な内容に疑問を持った場合も、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

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