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遺言書が法務局で保管可能に…「自筆証書遺言書保管制度」とは

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2018年、相続法大改正の法案が可決されました。
相続法の改正は約40年ぶりで、2020年7月より順次、実施されています。
この法案では、改正だけでなく、新設項目も多岐に渡り、「大改正」と呼ばれるにふさわしいものとなっています。
今回は「自筆証書遺言の保管制度」について見ていきましょう。

遺言書を保管する法務局

 

遺言書の有無で何が違うの?

近年、相続や遺言について悩む人が増えています。
当ブログでも何度か紹介してきましたが、遺産相続を行うとき、遺言があるとないとでは、大きな違いが生じることがあります。
相続手続きの流れは、被相続人が遺言書を遺しているかどうかによって大きく変わります。
そのため、相続手続きをする際は、まず遺言書があるかどうかをはっきりさせる必要があるのです。

遺言書がある場合

遺言書は、財産をどのように分割するかが書いてある書面です。
遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って相続が行われ、誰がどの財産を相続するか、遺言書で指定された相続の内容に優先的に従います。
そのため、遺産分割協議は必要ありません。

遺言書がない場合

遺言書がない場合は、法律で定められた法定相続人が遺産を相続することになります。
まず、法廷相続人の確定をします。
家族でも、故人の相続人すべてを把握しているとは限りません。
婚姻前に認知していた子や、音信不通の両親や兄弟がいるかもしれません。
次に、故人の遺した財産と、債務のすべてを確認します。
相続人と相続財産が確定したら、相続人同士で話し合いをします。
これが「遺産分割協議」です。
基本的に、相続人間の話し合いによって遺産の分け方を決めます。
そのため、極端に言えば、相続人全員が同意すれば、相続人のうち誰か1人がすべてを相続するようなこともできます。

しかし、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。
調停も不成立に終わった場合は、遺産審判に移ります。
遺産分割審判では、審理の上、審判官(裁判官)がどのように遺産分割をするか決定します。

自筆証書遺言の保管制度とは?

自筆証書遺言の保管制度が制定された理由は?

 

自筆証書遺言の保管制度

遺言書というものの存在は、ほとんどの人が知っていることと思います。
そして、遺産相続に関しての争いは、年々増えています。
最高裁判所の司法統計によれば、裁判所が扱った遺産分割トラブルは、1994年には9868件でしたが、2013年には1万5195件とかなり増えています。

また、遺言書は、大きく分けて公正証書遺言(公証役場で作成する遺言書)と自筆証書遺言(手書きの遺言書)の2種類があります。
公正証書遺言の場合は公証役場で作成し保管されますが、自筆証書遺言には今まで保管制度がありませんでした。
そのため、自筆証書遺言は自宅の金庫や机、タンスの引き出しなどに保管されている場合が多く、紛失してしまったり、特定の相続人が改ざんしたり捨てたりする危険性がありました。

そこで、遺言書の普及を促し、自筆証書遺言のデメリットを解消するとともに、相続をめぐる紛争を防止することを目的として作られたのが「法務局における遺言書の保管等に関する法律」なのです。

自筆証書遺言の保管制度の中身とは?

「法務局における自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、手書きの遺言書を法務局に預かってもらえます。
こうして、遺言書の破棄や隠匿、偽造などによる相続トラブルを避けることができるようになりました。

自筆証書遺言の保管制度のメリットとは?

トラブルを避けられる

繰り返しになりますが、法務局で遺言書を保管してもらうことにより、遺言書の破棄や隠匿などのトラブルを防ぐことができます。

費用が安い

自筆証書遺言の保管制度の費用

これまで、安心して遺言書を保管するには、公証役場で公正証書遺言を作り、公証役場で預かってもらうのが最も確実な方法でした。
ただ、保有資産に応じて作成手数料が変わるため、費用の面で負担が大きくなるケースがままありました。

しかし、「法務局における自筆証書遺言書保管制度」では、自分で手書きの遺言書を作成することができます。
その上、法務局での保管手数料は3900円と非常に安価です。

専門家が確認してくれる

遺言書保管所に保管の申請をすると、遺言書保管官が、遺言書保管法3条によって、その遺言書が民法968条が規定している自筆証書遺言の方式のとおりに書かれているかを確認します。
このため、自筆証書遺言にありがちな方式不備による無効を回避することができます。

家庭裁判所での検認が不要

自筆証書遺言書の場合、遺言者が亡くなったあと、家庭裁判所で「検認」という手続きをする必要があります。
遺言書の検認を受けなくても遺言書が無効になるわけではありませんが、銀行や不動産の相続手続きを進めることができません。
また、遺言書は検認の期日まで封を切ることができないため、遺言書の内容を確認するまでに時間がかかります。
しかも、相続人が遠方に住んでいる場合、検認日に、故人の居住地管轄の家庭裁判所まで出向かなくてはなりません。

しかし、法務局で保管した遺言書には、家庭裁判所での検認手続きが必要ないのです。
相続人は、遺言者が亡くなったあと、全国どこの法務局でも「遺言書情報証明書」を受け取ることができます。

自筆証書遺言の保管制度を申請するには?

では、遺言書を法務局で保管してもらうまでの流れを見ていきましょう。

遺言書を作る

まず遺言書を作成します。
保管してもらえる遺言書は、手書きで作成する「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言は、法律で定められた形式に則っていないものは無効になってしまいます。
不安な場合は事前に専門家に依頼した方が安心でしょう。

遺言書の保管申請書を作成する

次に、遺言書を保管してもらうための申請書を作成しましょう。
用紙は法務局に備え付けのものがあるので、必要事項を記入します。
また、法務省のホームページから申請書や記載例をダウンロードできます。
こちらからプリントアウトして記入してもよいでしょう。

保管申請の予約をする

自筆証書遺言書保管制度は、本人確認をするため遺言者本人が窓口に出向いて申請します。
遺言書の保管を申請する法務局は、

  1. 遺言者の住所地
  2. 遺言者の本籍地
  3. 遺言者所有の不動産の所在地

を管轄する法務局です。
たとえば、住所が東京都渋谷区で、本籍地が神奈川県横浜市、不動産を埼玉県川口市に持っているとします。
この人の場合、渋谷区を管轄する東京地方法務局本庁か、横浜を管轄する横浜地方法務局本庁、川口市を管轄するさいたま地方法務局に申請が可能です。
いずれかの法務局に連絡し、保管申請をする日時の予約をしましょう。

保管の申請をする

予約の日時に法務局に行き、保管申請書と必要書類を提出します。
必要な書類は、遺言書原本のほか、保管申請書、本籍の記載のある住民票、写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)です。
忘れずに持って行きましょう。
申請手続きが完了すると、保管証をもらえます。
保管証には、遺言書を保管している法務局や保管番号などが記載されています。

自筆証書遺言の保管制度申請の注意点は?

自筆証書遺言の保管制度申請に必要な証明書申請は本人のみ

 

 

保管申請の際には、厳格な本人確認が求められます。
代理人による申請はできません。
そのため、病気などの事情で法務局に出頭ができない場合は、遺言書保管制度を利用することができないということになります。
法務局に出頭できない場合は、公正証書遺言の作成を検討しましょう。
公正証書遺言の場合は、作成の際に公証人の出張制度があるため、本人が出向けなくても、公正証書遺言を作成できます。

保管の取りやめ

保管を取りやめたい場合は、遺言書を保管している法務局に保管を取りやめる「撤回書」を提出すれば、いつでも取りやめることができます。
撤回も、保管の申請時と同様、本人でなければ申請できません。

死後の通知がない

遺言は、遺言者の死亡のときから効力が発生します。
そのため、遺言者の死後、遺言書が相続人や遺言執行者に発見されないと、遺言の内容が実現されません。
しかし、今回の保管の仕組みでは、遺言者が死亡しても、相続人・受遺者・遺言執行者などに遺言書を保管していることが通知される仕組みがありません。
そのため、せっかく遺言書保管所に遺言書を預けても、そのことが相続人など関係者に知られないまま、遺産分割協議が行われてしまうというリスクがあります。
このリスクを避けるためには、遺言書の保管を申請したら、手続き終了後に受け取る「保管証」を受遺者や遺言執行者に渡して、死亡後、確実に遺言の内容が実現されるようにしておきましょう。
保管証を渡す場合は、必ず写しを取っておきましょう。

まとめ

自分の死後、相続で家族を争わせたくない。
自分があげたい人に、あげたいものを相続させたい。
このような希望を確実に叶えるには、この制度を利用するのがおすすめです。
従来の自筆証書遺言の弱点を補うことができ、安心です。

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