トラブル

高齢者に増えるセルフネグレクト、家族はどう支えたらいい?

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社会問題となって久しい「ゴミ屋敷」「汚部屋」。
そして、こういった部屋に住む高齢者が孤独死するという事件も多く起こっています。
このような問題の原因の一つとなるのが「セルフネグレクト」という現象だといわれています。
内閣府の調査では、セルフネグレクトの状態にある高齢者は、全国で推計約1万人程度いるとされています。
しかし、そのほかの調査などから類推すると、実際にセルフネグレクトに陥っている高齢者はもっと多いのではないかと考えられます。
今回は、セルフネグレクトと、そのケアについて見ていきましょう。

ネグレクトで無気力な女性

セルフネグレクトについて知ろう

セルフネグレクトとは?

「ネグレクト」という言葉は「無視する」「世話を怠る」という意味で、日本では育児放棄や介護放棄を指す言葉としてよく用いられています。
セルフネグレクトとは、日本語では「自己放任」と訳され、自分の身の回りのことをしない状態のこと。
日常生活に必要な行為をしない・できないことにより、自身の健康や安全が損なわれた状態をいいます。
たとえば、何日もお風呂に入らない、部屋を片付けない、必要な医療を受けないといった、病的にすさんだ生活をしている状態を指します。

内閣府の「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から 報告書」(2011年)では、セルフネグレクトの状態として

  • 家の前や室内にゴミが散乱した中で住んでいる
  • 極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している
  • 窓や壁などに穴が開いていたり、構造が傾いていたりする家にそのまま住み続けている
  • 認知症であるにも関わらず介護サービスを拒否されている
  • 重度の怪我を負っているにも関わらず治療を拒否されている

という例を挙げています。

こういった人々は、周囲に助けを求めることもしないため、人目につかず、ますます悪循環に陥っていきます。
同調査でも、セルフネグレクト状態にある高齢者について、「全数把握している」自治体は6.6%にとどまっています。
また、「全件数については把握していないが、大部分については把握している」とする自治体は19.1%で、両者を合わせても件数まで把握している自治体は全体の4分の1に過ぎないという結果に。
その一方で、「セルフネグレクト状態の高齢者がいるという情報は得ているが、件数の把握はしていない」自治体は33.5%、「特に把握していない」自治体も 40.6%となっており、今後、自治体としての取り組みの強化が求められています。

セルフネグレクトの原因は?

身体機能が落ちた老人

身体機能の低下

特に高齢者のセルフネグレクトで多い原因が「身体機能の低下」です。
生活をしっかりしようとする意思はあっても「体がついていかない」というケースです。

  • 視力が低下し、失明する手前である
  • 背骨が曲がり、高い位置に手が届かない
  • 筋力がないため、重いものが持てない
  • 脳梗塞の後遺症で、歩行が困難

このような症状により、生活をしっかりするのが難しい状態です。

また、高齢者に多い糖尿病を患っている人がセルフネグレクトになることも多いようです。
糖尿病が悪化すると、常にだるい、疲れやすいという症状があるほか、食事療法が厳しく、難しいといったことが原因と考えられています。

判断力の低下

判断力が低下して迷子になった老人

体は健康でも、認知症や精神疾患によって頭脳が不健康になると、セルフネグレクトになりやすくなります。
脳が病んで判断力が低下するため、やるべきこともわからず、生活は荒れていきます。

経済的貧困

栄養のある食材を買い、毎日しっかり食べるには、一定の経済力が必要です。
しかし、低所得の人は、健康的な食生活を送ることが困難です。
そのため、体が健康を損ない、脳もマイナス思考になってセルフネグレクトが加速するという例が多いようです。

お金がないため、病気になっても病院に行けません。医療費が支払えないだけでなく、健康保険に入っていないという人までいます。
健康保険への加入手続きは自分でしなければなりませんが、年金と違い、健康保険は、行政から加入してください、という勧告がありません。
繰り返しになりますが、内閣府の調査でわかったように、行政はセルフネグレクト状態の人の実態をほとんど把握していません。
そのため、保険についても加入の有無を把握していないと思われます。
このように、病院に行けないために病気がさらに悪化し、医療費もますます高くなるため、病院に行けない、という悪循環が発生してしまいます。

社会的孤立

老人の社会的孤立

内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果(全体版)」では、一人暮らしの高齢者に対して、いくつかの事例を挙げ「このような時に頼りたい相手はいますか」という質問をしています。
たとえば、「日常のちょっとしたことを頼みたい相手」は「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」の合計が47.1%と半数に迫る数。
また「心配事や悩み事を相談したい相手」も、「頼りたいとは思わない」、「当てはまる人はいない」割合が31.4%と、周囲に頼らない、頼れない高齢者が多いことを示しています。
このようなことから、身なりにも構わなくなり、最終的には全てがどうでも良くなる、そんな図式が浮かび上がります。

さらに、高齢者の孤立死との関係も注目されています。
孤立死した人の約8割が生前セルフネグレクト状態だった可能性があるともいわれており、周囲が気づいた時には健康状態がかなり悪化しているケースが少なくないようです。

虐待

セルフネグレクトは、虐待とも深い関係があります。
他者から虐げられ続けると、次第に「自分は役立たずだ」「生きていても仕方ない」などと思い込みがちになります。
特に、加害者が自分の子どもである場合、親はそのように育ててしまった自分の責任であると、他人に助けを求めようとしません。
誰にも迷惑をかけず、黙って静かに死んでいこうと考えてしまうようです。

心の支えの喪失

自分が病気にかかったり、配偶者や家族など親しい人が亡くなる、また、仕事を退職したことなど、生活のハリや心の支えが亡くなったことがきっかけで、セルフネグレクトに陥ることがあります。

セルフネグレクトをケアするには

ネグレクトのケア

セルフネグレクトの行き着く先は、孤立死である可能性が高いといわれています。
誰とも交流せず、必要な医療やサービスを受けない高齢者を放置すれば、やがて死後、長期間発見されない孤立死につながるのは当然と言えるでしょう。

セルフネグレクトは、自分自身による行為なので、高齢者虐待防止法で「虐待」に定義されていません。
そのため、たとえ健康や安全が損なわれている状態であっても、他人がサービスを受けさせるのは難しい状態にあります。
また、日本人の場合、プライドや遠慮、気兼ねから、自ら助けを求めない人も多いのです。
さらに、自分のことをセルフネグレクトだとは思っていない人も多いようです。

そんな時こそ、家族のケアが必要です。
高齢者がセルフネグレクトに至るまでには、さまざまな経緯や心の動きがあります。
家族だからこそ話せることもあるのではないでしょうか。
まずは、親御さんを孤独にさせないことが大切です。
独立して親と離れて暮らしている人は、スマホやインターネットで親御さんの顔を見て会話する機会を増やしてみましょう。
文字だけのメールやLINEではわからない、表情や様子を注意して観察することが大切です。

その中で、「○○しなさい」と強制することは避けましょう。特に高齢になると、頑固になったり、プライドが高くなったりしがちです。
「その人らしい生活」を支え、自己決定を尊重していくことが、セルフ・ネグレクトの人に必要な支援であると心得ましょう。

中には、何らかの理由から疎遠になってしまっている親子もいるかもしれません。
また、同居して介護している人は、毎日の生活の中で、自分を捨てて頑張っている人も多いでしょう。
しかし、頑張りすぎは良くありません。適度に息を抜き、時には自分だけの時間を持つことも考えましょう。
そのためには、行政との連携が必要になってきます。
近年、全国で高齢者の生活支援の仕組みがつくられています。近隣の人や、新聞配達などの人が配達時に様子をみるなどの試みも広がっています。
行政にまず相談し、連携して親御さんのケアをしていくことが大切です。
実際に、ある高齢者女性が自宅で倒れていたところを、訪問した支援センターの職員に発見され、一命を取り留めたという事例があります。
介護する側、家族側も、すべてを自分だけで看ようとせず、人の力を積極的に借りることも考えましょう。

まとめ

セルフネグレクトの人は、自分から支援を求めることがほとんどないため、発見することが難しいものです。
「何も困っていない」「自分で何とかできる、放っておいてくれ」と言っても、実際には助けが必要な状態であることが多いため、そのサインや兆候を見逃さないことが大切です。

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