死亡後の免許証、返納の手続きや流れ

死亡後の免許証、返納の手続きや流れ

家族が亡くなると、さまざまな手続きや遺品整理などをする必要が出てきます。
その中で、故人が所持していた運転免許証が出てくることがあります。
免許を持っていた人が亡くなったら、免許証はどうすればよいのでしょうか。
答えは「返納する」です。
免許証の返納は頻繁に行うことではない上、亡くなった人に関する手続きなので、どのようにすればよいか、分からないことも多いのではないでしょうか。
若いうちに免許証を返納する人は少ないため、故人の免許証返納が初めてという人も多いと思います。
そこで今回は、死亡後の運転免許証の返納について見ていきましょう。

故人の免許証の行方

故人の免許は返納しなくてはならないの?

故人が所持していた運転免許証。
亡くなったあとは、どのように扱えばよいのでしょうか。
免許証について、道路交通法の規定を見てみましょう。
105条で、「免許は、免許を受けた者が免許証の更新を受けなかったときは、その効力を失う」と規定しており、更新をしなければ免許が失効すると定めています。
さらに、107条では、免許が失効したときは、すみやかに免許証を返納しなければならないと規定しています。
また、法律には規定されていませんが、免許の保有者が亡くなった場合、その後、免許証の更新を受けることは不可能となります。
そのため、有効期限の経過を待たず、死亡によって免許証は失効すると解釈されています。
これらのことから「免許証の保有者が死亡したら、すみやかに免許証の返納を行う必要がある」ということになります。

運転免許証は、顔写真が添付されていたり、住所や生年月日などの個人情報が記載されていたりするため、公的な身分証明書としても代表的なアイテムです。
他には保険証やパスポートもありますが、身分証としては免許証を使う機会が最も多いのではないでしょうか。
そのため、間違ってもそのまま捨ててしまってはいけません。
もし悪用されてしまうと、故人の名誉が損なわれたり、知らないところでなんらかの契約を結ばれてしまうというような可能性もあります。
万が一にも悪用されないために、代理人がきちんと返納の手続きを行いましょう。

免許証の返納は誰が行うの?

故人の免許証の返納

各種届け出や契約の解約、カード類の返納などさまざまな事務処理が発生する中、つい忘れがちですが、運転免許証の返納も行わなくてはなりません。
義務として規定されているわけではありませんが、免許証の返納は、故人の遺族が代理人として返納の手続きを行うのが一般的です。

免許証は都道府県の国家公安委員会が管理しています。
しかし、こうした組織や警察署は、出生や死亡に関する情報を自治体と共有しているわけではありません。
そのため、届け出がない限り、免許証の持ち主の死亡を知ることができないのです。
そこで、死亡の事実を自治体に届け出る遺族が、免許証を返納するのが合理的ということになります。

もし、遺族以外の代理人が手続きを行う場合は、必要書類などが変わる場合があります。
届け出先に、事前に確認しておきましょう。

免許証を返納する時期はいつごろ?

家族が亡くなってしまうと、家族が行わなければいけないことは山積みです。
葬儀や埋葬など、どうしても優先順位の高いことからこなしていくことになります。
そのため、忙しい中で免許証の返納というのは、どうしても優先順位が後になったり、なかなか思いつかなかったりすることかもしれません。
すぐに返納しなかったからといって特に罰則などがあるわけではありませんし、万が一返納をしなかったとしても罰則がないことも理由の一つかもしれませんね。
返納を忘れてしまった場合でも、持ち主が亡くなった以上、次の更新手続きができないので、免許証は自動的に失効となります。
このことからも、免許証を返納する時期はいつまでと明確に定められていません。
しかし、悪用を防止する意味でも、死亡後できるだけ速やかに返納することが望ましいでしょう。

免許証はどこに返納するの?

免許証の返納場所

免許証を返納するには、最寄りの警察署か運転免許センター(国家公安委員会)に行くことになります。
これらの場所には「運転免許証返納届」という書類が備え付けてありますので、その書類に必要事項を記入して窓口に提出しましょう。

また、交番や駐在所など身近な場所で返納できる地域もあります。
近くに警察署や免許センターがない場合は、事前に電話などで確認するとよいでしょう。

返納手続きに必要なものは?

返納手続きを行う際には、以下のものを持って行きます。

  • 死亡した人の運転免許証
  • 死亡診断書もしくは戸籍謄本の写し
  • 届け出をする人の身分を証明するもの
  • 運転免許証返納届
  • 届出人の印鑑(認印でOKです)

ただし、窓口により異なることがあるので、事前に電話などで確認しておいた方が確実です。

ちなみに、死亡診断書は免許証の返納手続き以外の手続きにも使用することが多いので、あらかじめ何枚かコピーを取っておくとよいでしょう。
戸籍謄本の写しは、死亡届を提出し、手続きが終了した時点のものが必要です。

こんな時どうする? 免許返納に関するあれこれ

免許証の返納を考える女性

運転経歴証明書

近年、高齢になったことで運転免許証を返納する人が増えています。
高齢者の運転事故が増え、家族に勧められたり、体の衰えなどを自覚したりすることから免許の自主返納をするのです。

運転免許証の返納が制度化されたのは1998年。
しかし、増え始めたのは2012年頃からでした。
当時、アクセルとブレーキを踏み間違えて歩行者に突っ込んだり、高速道路を逆走したりするなど、高齢ドライバーによる重大事故が相次ぐようになりました。
そのため、高齢者や家族に自主返納を促す風潮が広がりました。
さらに、2017年は制度が始まって以来、最大の42万3800人が自主返納しました。
このうち、75歳以上の後期高齢者は前年比56%増の25万3937人と大きく伸びたそうです。
同年3月、改正道路交通法の施行により、75歳以上のドライバーに対する認知機能検査が強化された影響が大きいと考えられています。

このように、高齢者の運転免許自主返納は増える傾向にあります。
しかし、免許証は身分証明書としても使えるため、返納してしまうと、運転はしなくても生活において不便が生じることがあります。

このため、免許証の代わりに「運転経歴証明書」を発行してもらうことができます。
これは、その人がかつて運転免許証を持っていたことや、車を運転していたことを証明する書類です。
運転免許証と同じ仕様で、写真もつきます。
この運転経歴証明書も、所有者が亡くなった場合、免許証と同様に返納が必要です。
運転経歴証明書は、運転免許証と違い有効期限がないため、悪用されるリスクも高いと言えます。
無用なトラブルを避けるため、早めに返納しておきましょう。

免許証を返納したくない

免許を返納したくない

亡くなった人の運転免許証も遺品の一種です。
表には故人の写真もあることから、返納せず形見として手元に置きたい人もいるかもしれませんね。
この場合は、返納する場所で相談してみましょう、
パンチなどで免許証に穴を開けて使えない状態にし、無効のマークをつけてくれます。
このように処理してもらえば、免許証を持ち帰ることができます。

免許を返してもらった場合、例えば仏壇でお位牌などと一緒にするなどして、厳重に保管しましょう。

免許証が失効していたら?

期間は所持者の状況によって異なりますが、免許証の有効期間は3〜5年です。
有効期間を延長するためには更新が必要です。
もし、更新をせずに有効期間を過ぎてしまうと、免許証は失効となるため、免許証を持っていても車の運転はできなくなります。

効力がないなら、わざわざ返納しなくてもいいんじゃない? と考える人もいるかもしれません。
しかし、返納していないと、偽造されたり、悪用されたりする可能性は否定できません。
故人の免許証の有効期限が切れていても、返還の手続きはしておいたほうが安心でしょう。

まとめ

家族が亡くなってしまった場合に発生する各種手続きに慣れている人は、ほとんどいません。
「何からすればいいか、分からない」と悩んでしまう人も多いでしょう。
もし遺品整理を依頼する予定があれば、遺品整理業者に相談してみましょう。
捨ててはいけないものや残すもののアドバイスから捜索、手続きの代行まで、さまざまなサービスを行っています。
必要な手続きに優先順位を付けて順を追って対応していくためにも、相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。