親族を装うなどして電話をかけ、さまざまな理由で現金が至急必要であると信じ込ませ、動転した被害者に現金を振り込ませる・・・。
「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺は、2003年頃から目立つようになりました。
2019年6月、安倍総理が総理大臣官邸で開いた第31回犯罪対策閣僚会議において、2014年における特殊詐欺の被害は1万3392件、被害総額は過去最高の約 566 億円に上るなど、大きな被害をもたらしていることが報告されました。
その後も、2018年の認知件数は約1万 6500 件、被害総額は約 364 億円となるなど、特殊詐欺の被害状況は依然として高い水準で推移しています。
安倍総理は、この会議の席上で「子や孫を思う家族の気持ちに付け込んだオレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺は、極めて卑劣な犯罪です。被害者の約8割を占める高齢者が今後もますます増えていく中、決して看過することはできません」と述べています。
様々な対策が講じられているにも関わらず、減らない特殊詐欺。大切な老後資産や遺産を守るため、どう自衛すればよいのでしょうか。
目次
特殊詐欺とは?
特殊詐欺とは、面識のない不特定多数の他人に対し、電話などの通信手段によって、顔を合わせることなく現金をだまし取る詐欺です。
特殊詐欺には、オレオレ詐欺などの振り込め詐欺をはじめ、いろいろな種類があります。
オレオレ詐欺
子や孫など親族などを装って電話をかけ、会社の横領金の補填や借金の返済、事故の賠償金などを理由に、現金を口座に振り込ませ、だまし取る詐欺です。
最近では、現金やキャッシュカードを直接被害者の自宅などに取りに来る「現金受取型」や、宅配便などを利用して犯人が指定した宛先に配達させる「現金送付型」という、振り込ませない振り込め詐欺など、手口が増えてきています。
架空請求詐欺
郵便やインターネット、メールなどを利用して、不特定の人に架空の請求書などを送付し、現金を口座に振り込ませたり、宅配便や郵送などで送金させるなどの方法によりだまし取る詐欺です。
「支払え詐欺」とも呼ばれています。
融資保証金詐欺
低金利で融資をする旨の文書などを送付し、融資を申し込んできた人に対し、保証金や信用調査などの名目で現金を預金口座に振り込ませたり、宅配便や郵送などで送金させるなどの方法によりだまし取る詐欺をいいます。
もちろん、実際に融資をすることはありません。
「貸します詐欺」とも言われます。
還付金等詐欺
税務署や社会保険庁、市町村役場、電力会社、電話会社などをかたり、税金や保険料、医療費、利用料金等の還付などに必要な手続きを装います。
電話で指示しながら被害者にATMを操作させ、送金させるにより現金をだまし取る詐欺です。
「返します詐欺」と呼ばれます。
金融商品等取引名目
ほとんど価値がない有価証券(社債や未公開株など)や、架空の有価証券、外国通貨などの購入をダイレクトメールなどで勧めます。
その後、別の犯人が電話で「必ず儲かります」「3倍で買い取ります」などと言って購入するように仕向け、これらを買えば高額で買い取ってもらえると信じ込ませて、現金をだまし取る詐欺をいいます。
この手口は「劇場型」と呼ばれ、複数の会社や人物が登場し、被害者をだまします。
また、だましのネタは有価証券に限らず、外国通貨、鉱物の採掘権、仏像、金、ダイヤモンドなどの物品、会員権など多岐にわたります。
「儲かります詐欺」と呼ばれます。
ギャンブル必勝情報提供名目
雑誌の広告やメールなどで、「パチンコ打ち子募集」「サクラのバイト」などと勧誘し、登録料や保証料として現金を振り込ませます。
また、「パチンコ攻略法」や数字選択式宝くじの「当たり番号情報」、「競馬必勝情報」などとうたって虚偽の情報を提供し、これを名目に現金を振り込ませ、だまし取る詐欺です。
こちらも「儲かります詐欺」と呼ばれます。
異性との交際あっせん名目
雑誌やメール、サイト上で「女性紹介」などの情報を掲載し、申し込んだ人に対して、虚偽の異性の情報を提供し、会員登録料や保証金などと言って現金を振り込ませます。
また、異性になりすまして現金を要求したり、サイト上で高額なポイントなどを購入させたりして、現金をだまし取ることもあります。
「紹介します詐欺」とも言われます。
その他
上記以外の特殊詐欺。
たとえば、以前に詐欺に遭った人に対して、弁護士を騙って「被害救済活動をしている」と名乗り、弁護士費用としてお金を振り込ませます。
その後は連絡が取れなくなり、後の祭りとなってしまいます。
詐欺に遭いやすいのは、どんな人?
警察庁の調べによると、特殊詐欺の被害に遭った人の82.9%が60代以上の高齢者です。
手口別では、オレオレ詐欺(96.2%)、還付金等詐欺(93.8%)で、高齢者の被害件数占める割合が非常に高くなっています。
この世代は、一人暮らしや夫婦だけの二人暮らしが多いこと、また比較的に家にいる時間が長いことから、狙われやすいと考えられます。
また、高齢者は身近に相談できる人がいない場合が多いことからも、騙されやすいと言えるでしょう。
また、性別では、女性の割合が71.2%を占めています。中でも女性の被害が多いのは、オレオレ詐欺です。
70歳以上の女性が被害者となる割合は53.9%と、突出して高くなっています。また、架空請求詐欺も年配の女性が多く被害に遭っています。
一方で、女性よりも男性の被害者が多いのが、融資保証金詐欺です。
これは、保証や担保が少なくても借り入れができる融資を求める人が男性に多いことが理由でしょう。
60歳以上の男性が被害者全体の16.3%を占めています。
他にもギャンブル必勝法という情報を売りつける詐欺でも、年配の男性が多く被害に遭っています。
特殊詐欺に遭わないためには?
「自分は大丈夫」という思い込みを捨てる
特殊詐欺の被害者に顕著なのが、「自分は大丈夫」という思い込みです。
詐欺被害に遭った人の9割以上が「自分に限ってまさか」「考えたこともなかった」と答えています。
「息子や孫の声を聞き間違えるはずがない」
「知らない人なのに、話を鵜呑みにしてお金を渡すなんあり得ない・・・」
と思っていても、相手はプロの犯罪者です。
実に巧妙に心理を揺さぶり、不安な心情に付け込んで疑う余地を与えないのです。
自分は大丈夫という思い込みは捨てて、詐欺に関する情報を集めるなど、日頃から対策しておきましょう。
家族の合言葉を作る
特殊詐欺犯は、電話を多く利用します。
そこで、家族間で「合言葉」を決め、怪しい電話がかかってきたら、この合言葉で相手が本物か偽物かを判断しましょう。
合言葉がない場合は、ペットの名前や、自家用車の車種など、家族しか知り得ない事柄を、わざと間違えて伝えましょう。
つまり、カマをかけるわけです。
そこで、相手がそれを否定しなければ、家族ではないと確認できます。
電話は常に留守番電話にしておく
電話は、基本的に留守番電話にしておきましょう。メッセージが流れることで、犯人が諦めるケースも多く、また、仮にメッセージが吹き込まれた場合でも、冷静に判断することができます。
また、知らない番号には出ないようにするのも有効です。
本当に大事な内容であれば、メッセージが吹き込まれたり、何度もかかってきたりします。
様子をみて、大丈夫だと分かった電話にだけ出るようにしましょう。
防犯機器を利用する
電話の着信時に「この電話は振り込め詐欺等の犯罪被害防止のため、会話内容が自動的に録音されます」など、警告メッセージをアナウンスする機能のついた電話が販売されています。
また、通話録音機能、着信拒否機能などを電話回線に付加する装置などもあるので、利用するとよいでしょう。
ATMの利用限度額を最低にしておく
ほとんどの金融機関で、1日に利用できるATM 限度額の設定が可能です。こうしておけば、万が一詐欺に遭ってしまっても、被害額を最小限に抑えることができます。
チェックポイントを書き出す
詐欺に遭わないために注意すべきポイントを書き出し、電話のそばに貼っておきましょう。
- 相手の名前や肩書きを聞く
- 話の内容をメモする
- どんなに訊かれても、個人情報は絶対に教えない
- 現金はレターパックや宅配で送れないルール。求められても応じない
- 携帯での指示を受けながらのATM操作は絶対に断る
- 警察総合相談番号 #9110
- 消費者ホットライン番号 188
など。
まとめ
特殊詐欺の犯人は、巧妙な手口で人の心のスキを衝いてだまそうとしてきます。その手口にはまって、大切な老後資金を失うようなことにならないよう、日ごろから冷静を心がけましょう。
また、家族と離れて暮らしている場合は、たまに電話をして近況を聞くなど、家族の絆を強くしておくことも大切です。